感染症法等改正案に対する談話

11月24日、大阪府保険医協会の斎藤和則政策調査部長が「感染症法等の一部を改正する法律案」について談話を発表しました。

感染症法等改正案に対する談話

2022年11月24日
大阪府保険医協会 斎藤和則 政策調査部長

 感染症法等改正案(「感染症法等の一部を改正する法律案」)が11月8日の衆議院本会議で可決され、参議院に送付された。同改正案は、今国会で成立の見通しと報じられている。

 今回の改定案では、全ての医療機関が都道府県の予防計画(病床数などの数値目標)に協力する努力義務とともに、都道府県と協定(病床などの提供)を結ぶための協議に応じる義務が課せられている。また、公立・公的医療機関や特定機能病院、地域医療支援病院は協定を結び医療提供する義務があり、これに違反した場合は罰則を課されるとの内容になっている。

 この間コロナ禍における医療ひっ迫の根本原因は、長年の病床数削減・医療従事者を増やしてこなかったことなど医療・社会保障費抑制政策にある。こういった政策を根本から転換し、平時から余力のある医療体制整備をしなければ、事前協定を交わしたところで結果は大きく変わらないであろう。

 感染症法は患者への「良質かつ適切な医療の保障」を国の責務としている。コロナ禍で医療にかかれずに多くの人が生命を落としたことは、公的医療保険制度の役割を無にしたに等しい。それを踏まえ、感染症患者へ確実な医療の提供を保証し、死亡者ゼロを目的とした法改正を目指すべきである。

 コロナ以外にも新型インフルエンザなど今後どのような「新興感染症」や「指定感染症」が襲来するかは予測不能である。協定締結医療機関に求められる専門性、人員体制・設備に対してはそれらを支える国・自治体の役割や具体的な財政支援等が必要であり、それでこそ医療機関が十分な力を発揮できる。

 特に大阪では、保健所業務のひっ迫に代表される行政の対応不備が医療崩壊を招き、ひいては死亡者数の増大につながっている。国においても感染者数を抑え込むための施策が不十分であったことが最大の問題点である。今回の感染症法等改正案はコロナの3年間を総括・反省を行った上で罰則規定を設けることなく、いかに多くの医療機関が患者と国民のために力を発揮できるかに結びつくよう審議を望むものである。